確か98年の春頃でした。当時私は、まだレコーディング・アレンジャーとしての仕事に追われていました。Kinki Kidsの「青の時代」などをアレンジしていた頃だと思います。自分のスタジオ(naUta Midi Room、現在のaosis Recording Studio)にいろいろなスタジオミュージシャンを呼んで、レコーディングしていました。これはもう10数年続いたスタイルで、呼ばれたミュージシャンもいつものパターンでてきぱきと仕事をこなしていました。 しかし、この頃から少し様子が変わってきて、ミュージシャン達は仕事が終わってもなかなか帰らないようになりました。みなことごとく、最近仕事が少ないだの、ろくな仕事がないだのグチって帰っていくんです。ミュージシャン達の話によると、どのスタジオもガラガラで閑古鳥が鳴いていて、閉鎖する所もあるとのこと。 そういえば、レコードメーカーも統合するところ、無くなるところも多く、ディレクターなどもやれリストラだの転業だの、ネガティブな話ばっかり。不景気の波をモロに受けるのは、やはり現場のミュージシャンやスタジオ、レコードメーカーのディレクター達です。そんなミュージシャンたちのグチを聞いているうちに、これは何かやらないといけないと考えはじめました。 人間、こういう風にお尻を叩かれないと、行動を起こさないのは悲しいが、みんながこういう時期に一丸となって行動を起こせるのは、ひとつのチャンスだと思いました。 ミュージシャンとは、本来自分の音楽をアピールし、どちらかというと一般サラリーマンよりは行動的だったはずなのに、いつの日からか、たぶんバブル時期からでしょう、自分で行動を起こさず、黙っていても仕事がまわって来るようになり、他力本願な考え方になり、もはや非常に受け身の存在になってしまいました。 もっと大きな観点から見れば、音楽自体も一人歩き出来ない存在になっていました。 歌謡曲などは、C.Mやドラマなどのタイアップが決まらなければ、発売すら出来ない、要するに、業界自体C.Mやドラマの都合に左右され、非常にシステマチックになってしまい、一人歩き出来ない状態になってきているのです。400万枚以上も売り上げるアーティストも出てきているが、それはほんの一握りで、それ以外の99%のアーティストは1万枚も売れない。システマチックになっているくせに、売れるか売れないかは時の運。こんな、競馬予想よりも率の悪いコトをしている、これが現実です。 大手のメジャーレコード会社では、東京の本社はもちろんのこと、北は北海道から南は沖縄まで全国に幾つもの営業所があり、何千名も社員がいてその社員の女房、子供まで入れたら相当な人数。400万枚以上も売り上げるティーンエイジャーの女の子アーティストが「あたし、もう辞めた。」と言ったら、全員来月から路頭に迷うことになるのです。 400万枚以上のアーティストが一人出るということは、本当はその下に20万、30万という中堅のアーティストが何十人もいなければ、正常な状態とは言えないのです。
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